「・・・・・・・誰だお前。」
レオンは険しい顔をして、男に尋ねる。
「あ・・・・私、ミノサロウドと言います。勝手ながら、お話を聞かせていただきました。」
「・・・・・ほんと失礼な人ね。」
リウはイスから降りて男の方へ体を向ける。
すると、横の方からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
目を向けると、よく似た少年が二人が窓の方の机に座っていた。
どうやら双子のようだ。
一人は気の強そうな子。もう一人は冷静を保った子。
「ほ〜んと、お前らってバカだよな。気づかなければよかったものの。」
「・・・・・・悪い事は言いません。本当のことなんて探索しない事です。」
「なんだぁ??このナマイキなガキは。」
少年ら二人は机から降りると、二歩くらい歩いて止まった。
「俺の名前はクロ。」
「僕の名前はロウだよ。」
「・・・・・・・・・・ありふれた名前ね。犬みたい。」
「う、うるせーなっ!!さっきからそこの女はぐちぐちとっ!!」
「お、お兄ちゃん!!まだ喧嘩うっちゃダメだよ!!」
漫才コンビかこいつらっという目でレオンは少年たちを見ていた。
ミノサロウドはそんな様子に少し呆れた表情を見せたが何も見なかったかのように、レオンたちに言う。
「まぁ、要するに私たちが言いたい事はチェインという人の探索はやめたほうがいいですよっと警告しに来たのです。」
「どういうことですか??」
淡々と言うミノサロウドに向かってエリスが言った。
そんな彼女を彼は黙って見ていた。
「だってチェインっていうやつは昔、人々に恐れられた殺人鬼だぜ??」
「約100年前には1秒に100人以上の人を切り殺したとか。」
クロがニヤニヤと笑いながら言った後、続けてロウが言った。
エリスは思わず、両手で口を覆いかぶせる。
「そしてなぜかは知らないが、今・・・・彼女はあなたの中にいる。」
「・・・・・やっぱり。」
ミノサロウドの言った言葉で確信が持てた。
やはり、エリスの中には彼女がいたのだ。チェイン・グラティスが。
「でもよ。血の臭いがついたお前らにチェイン・グラティスを『殺人鬼』呼ばわりする権利は無いんじゃねぇの??」
話題転換をしたのはレオンだった。
ミノサロウドたちはもちろん、一瞬驚いた顔をしていた。
「ははは・・・・気づいていましたか。」
「まぁ、どちらにしろ。エリスさんには悪いけど死んでもらわなきゃいけないからね。気づいてもどうにもなんないね。」
「!?」
ミノサロウドとクロの発言に一同は構える。
ミノサロウドは手を上に上げた。
「ここでは、お店の人に迷惑がかかります。」
パチンと指を鳴らすと、地面が揺らいだ。
いや、むしろこの空間すべてが揺らいだと言ったほうがいいだろう。
気づくと、町の外に出ていた。
「ここならいいでしょう。」
「・・・・・どこにしたって戦うのはメンドウね。」
リウは大きくため息をつくと、手のグーロブを変形させて槍に変えた。
「んじゃ、俺はこいつと戦うか。」
レオンは手に鎌を持つとその先をミノサロウドに向けた。
彼もまたそれを狙っていたのか、口元で少し微笑んだ。
「んじゃあ、私たちはこのふた」
「ちょっと、楽しい事やり始めてるじゃない。」
声が聞こえたほうには女が一人。
両手には棒の先に鉄球がついたものを持っている。
「あたいも混ぜてよ!!」
「『混ぜてよ!!』じゃねぇよ!!だいたいからしてくるのが遅いんだよ!チルレット!!」
「うるさいねぇ。朝は苦手なんだよ!!黙って引っ込んでなガキ。」
チルレットと呼ばれた女はクロにそう言うと、まっすぐリウの方に向かってきた。
本日二回目、ガキと呼ばれたクロは相当へこんでいた。
「あたいとじゃダメ??」
「・・・・・・・・・・かまわないわ。」
「さんきゅー♪」
チルレットはにっこりと笑ってぐるんと棒をまわす。
「んじゃ、そっちよろしくね。」
「まかせてください。いくよ!テラ!!」
「おうタトゥ!!」
エリスのかけ声にこくんとテラはうなずいた。
もちろん、相手はあの双子の少年。
「じゃあ、いくか。」
「うん。」
青空の下。カンっと金属がぶつかる音が鳴り響く。
もう向こうにいる人は戦っているんだろう。
エリスはそう思いながら、地面を蹴って前に出た。