空の森(くうのもり)・・・・・・それは幻の森。
殺気も邪気もない。純粋で気配すらない澄んだ森。
そこには大きな大きな木があります。それが白の木。
どんなに強い魔力を持っている者でも、比にならないほど強い魔力を持った木。
木の中には一つの世界がありました。
その世界はエルフたちから「空の世界(くうのせかい)」と呼ばれています。
迷い込んできた人間、魔族、エルフ族、ドラゴン族、そしてハーフエルフ。
さまざまな種族が住んでいます。
これはその世界に住んでいるハーフエルフのお話。
彼女の名前はエリス・グラティス。髪は茶色で長く、目はきれいな緑色している。
自然に囲まれた家。それが彼女の家だ。
毎日毎日、変わらない生活を送る。彼女はそのことを幸せに思っていた。
だが、その日は困ったことが二つあった。
一つ目は、屋根がポッカリと空いて空が見えてしまったこと。
空を眺めることは嫌いではないが、雨の日とかは大変だからだ。
そして、二つ目は・・・・・・・・・
「タヒョ〜〜〜っっ!!!痛いタトゥねぇ〜!!!ここどこタトゥか〜??」
この謎のトカゲ・・・・・らしき生き物。
色は青っていうより水色っぽい感じの生き物。語尾に「タトゥ」をつけるのが癖のようだ。
しかも、驚くべき事は二足歩行ができるという事だ。
ハッキリとわかることと言えば、この生き物があの屋根を突き破ってここに落ちてきたということぐらぃだろう。
「ん?あんた誰タトゥか??」
謎の生き物は馴れ馴れしくそう言い、よっこいしょっとその場に立ち上がりエリスの方へと目を向けた。
「えっ、えぇぇっと。わ、私の名前はエリスだけど・・・・・・あなたは誰ですか??」
今まで生きてきた中で、こんな動物は見たことない。
ましてや、図鑑などの本にもこんな動物がいるなんて見た事もない。
とにかく何者・・・・いや、一体この生き物がどういう類のものであるかが知りたかった。
「タトゥ??タトゥはタトゥたトゥ!!」
「はぃ?!」
理解不能だ。エリスは頭を抱えた。
「え、えーと。た、タトゥさん・・・・・なんですか??」
「違うタトゥよ!・・・・・タトゥは『テラ』っていうタトゥ!!ちなみに種族はドラゴンタトゥよ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ?
これが・・・・・・・・・ドラゴン?!
エリスに電撃が走る。同時になんとも言えない冷たくも感じる衝動が前進を駆け巡る。
んっ?とエリスは考えた。そして、再び自分を『テラ』と名乗った生き物を見る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・どう見たってトカゲじゃん☆(=▽=)ウフ
「ひどいタトゥね〜!!タトゥはどっからどう見てもドラゴンタトゥよ!!」
どうやらエリスは声を出して言ってしまったみたいだ。
「えぇ〜と、とりあえずテラ・・・・・さん??・・・・・・・その・・・・一体どこから・・・・」
テラはずいっと机から身を乗り出した。
そして、ポッカリと空いた屋根を指差した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いいい、いえ!!それはわかっているんです!!!!そもそもあなたはいったいなんなんですか?!」
テラはドンと机に手を置いた。
「タトゥはドラゴンタトゥ!!」
「それもわかってるんですーーーーーーー!!!!!!!!!!」
テラに続いて机をドンと手でたたく。
「・・・・・・・・・ん〜。タトゥもよくわからないんタトゥよね。」
エリスは、はぁーっと息を吐いた。
・・・・・・・・・・・・・・・疲れる・・・・・。
***********************************************************************************
タトゥはドラゴン界に住んでいるドラゴンタトゥ。
みんなはちゃんとタトゥをドラゴンって認めているタトゥよ!!
でも、ある日。
タトゥはドラゴン界で・・・・・・・やってはいけないことをやってしまったタトゥ。
タトゥのおじいちゃんはドラゴン界の中でも、一番えらいドラゴンタトゥ。
その・・・・・・・・・・・おじいちゃんにタトゥは・・・・・・・・・・・・・
ズスッ
ギャッ!!
目潰しをしてしまったタトゥ。
怒ったおじいちゃんはタトゥに「まじめに修行をしてこい」っと言ったタトゥ。
そして、「ドラゴン界の貝塚」と言われているところに、ほうりこまれたタトゥ。
それで、気づいたら空にいたタトゥ。
***********************************************************************************
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あまりのバカらしさに頭を抱え込むエリス。
話を終えたテラはなんとも涼しい顔をしている。
「・・・・・あ、あの、なんで目潰しを・・・・・・」
「いや〜、一度やってみたかったんタトゥよね〜〜!!」
スッキリとした顔でテラは答えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉が思いつかない。エリスはそのままへたっとイスへ腰を戻す。
へらへらと笑っているテラをただじーっと見ることしかできなかった。
ザワッ
急に訪れる殺気。部屋中に広がる冷たい空気。
エリスノ心臓をドクッとうならせる。衝動にまかせ、エリスは勢いよくイスから立った。
「・・・・・・・・・また・・・・・・・来た・・・・・。」
「来たって?なにがタトゥか??」
壁にかけていた剣を持ってエリスは表に出た。
思ったとおり。
外は黒い雲がかかり、あたりは暗くなっていた。
目の前には無数の悪魔が広がっていた。
「ななななな、何タトゥかぁ〜?!この無数の悪魔は!!!」
さすがのテラも驚いた。そんなテラに構わず、エリスは鞘から剣を出し、悪魔のほうに向かって走りだした。
「ああああああああ危ないタトゥよっっ!!!!!」
叫んでいるテラを無視して敵の後ろへとまわり込む。
襲ってくる悪魔を一匹ずつ急所を狙って当てる。
無数にいたはずの悪魔がわずか数秒で地面へと倒れていった。
「す、すごいタトゥね・・・・・・む?」
テラは悪魔をよく見た。そして、急に自身がさーっと血の気がひいていくのを感じた。
ズササーッと音と砂煙をたてて悪魔から離れる。
「ちょ、ちょっと待つタトゥ!!こ、これ全員死んでないタトゥよ?!」
テラはエリスを見た。
血さえついてない剣。切ってもいないことがよくわかる。
「そ、それは・・・・・・・・・・・」
答えようとした瞬間、エリスはガッと足をつかまれ、強く地面へとひっぱられた。
エリスはその場へと倒れこむ。
エリスの足の方を見ると、彼女の足をつかんでいる悪魔がニヤリと笑っていた。
「ツ・・・・カマエ・・・・タ」
その声にビクッと体を震わせる。なんとかその手を離そうとしたが、手はエリスを離そうとしない。
「オマエヲ・・・・・コロス・・・・」
「・・・・・・・・・っっ!!!!!」
悪魔は足をつかんだまま、反対の手で槍を持った。
その槍がエリスにめがけて指されようとしたそのときだった。
「そんなことさせないタトゥよ〜〜!!!」
すぅっとテラは息を吸い込み、ぐっと口でためた。
そして、悪魔に向かってボウッと赤く大きなブレスを吐いた。
悪魔はテラの突然の攻撃に驚き、手を離したが避ける事もできず。
もがき苦しみ、やがて動かなくなった。
ほかの悪魔たちも次々と起き上がっていたが、反抗する間もなくテラのブレスが悪魔たちを包んだ。
そして、悪魔たちは跡形も無くエリス達の目の前から消えた。
「ふぅ。危なかったタトゥね〜。大丈夫タトゥか??」
「え、あぁ。はい。大丈夫。」
正直、驚いていた。
・・・・・・・・・・・・・本当にトカゲじゃなかった。
「そ、そこタトゥか?!見るところっ!!!」
もはや目からその言葉を発しているエリスに向かってテラは激しく突っ込んだ。
「・・・・・・・とりあえず、ありがとう。助かりました!」
テラに向かって礼をした。
「いやいや、目の前で襲われているやつをほっておくバカはいないタトゥよ!」
テラはにこにこと笑っていたが、突然にその笑みは消え失せる。
すると、どんどんテラの表情が青くなっていった。
「・・・・・・・・・どうしたんですか??」
「た、タヒョタヒョ・・・・・・。」
テラの目はエリスを見ていなかった。
なにかもう少し遠くを見る目。
ところでさっきから気にはなっていたのだが。
・・・・・・・・・・・なんか暑い。(後ろが)
今になって気がついた。なんか焦げ臭い。(後ろが)
エリスはおそるおそる振り返ってみる。
そこにはゴォゴォパチパチと鳴りながら燃え上がっていくエリスの家があった。
「あ・・・・・・・・・あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
エリスは大きな声で叫ぶ。
自分の家が燃えている。原因は言うまでもないが、あえて説明をするとおそらくテラの吐いたブレスだろう。
「・・・・・・・・・ひどいですよぅ!!!あぁ、私の家がぁぁ〜〜〜。」
「悪気があってやったんじゃないタトゥ!!決してそんなことないタトゥよぉぉぉぉ!!!!」
パチパチと燃え上がる火は消えることなく、エリスの家はこうして無くなってしまった。
そして、ここからエリスは真実と向き合う旅になるなんて・・・・・予想もできなかった。