みんながひとつの部屋に集まったとき、エリスは真剣な顔で話し始めた。
「・・・・みんなに話があるんです。これからのことについて。」
「・・・・・そういえば、あなたたちの旅の目的を聞いていなかったしね。」
「俺も。」
リウとレオンはうんっとうなずく。
ふと、テラが首をかしげた。
「こ、これからって・・・・アルバイトをするんタトゥよね??」
「そのつもりだったんだけど・・・。」
レオンとリウは何かを言おうとしたが、聞く気が失せたか・・・・それとも気遣いか。
二人は黙ってエリスの話を聞いた。
「・・・・前に・・・そう、レオンさんと出会って間もない頃。町に悪魔が入ってきたことがありましたよね??」
「あぁ、そーいやそうだな。」
「あのときに、たしか初めてのバイトが失敗しちゃったんタトゥよね。」
「・・・・・・私が町の中にいたら、多くの人に迷惑がかかる。」
「・・・・・・・・・呪いか。」
レオンがチッと舌打ちをする。
「だから、定期的に動こうと思うの。」
「・・・・・その方がいいと私も思うわ。悪魔どころか、これからあなたの持っている石を狙う人が増えてくるからね。」
リウの言葉にエリスは再びうなずいた。
「・・・・・でもそれは、前置きとしてとってほしいの。ここからが私が言いたかった本題なんです。」
「ほ、本題??」
理由はそれではないのか。レオンたちの疑問は深まるばかりだった。
エリスは目をそらし、したを向いた。
「・・・・・・・・・・みんなこの名前知ってるよね。『チェイン』っていう名前。」
「!?」
・・・・・・・・・・『チェイン』。
もちろん忘れるはずがない。
つい最近、彼女に彼らはあったのだから。
紫の髪、そして体より大きな剣。
― 「私の名前はチェイン。チェイン・グラティスよ。」
彼女は突然現れた。そして、突然消えていった。
しかし、その事実はエリスの存在とチェインの存在とのすれ違いを表す。
リウは黙って腕を組むと少し息を吐いて、目を瞑った。
「・・・・・・・・さぁ?知らないわ。」
もちろん、一同の目線はリウへと動く。
とくにレオンに至ってはかなり驚いている様子で、リウを見ていた。
リウは顔色一つ変えずに、レオンへと目を向ける。
「そうよね?レオン。」
「お、俺かよ。」
「・・・・・・・・た、タヒョタヒョ。」
「あんたじゃないわよ。」
「あ、あぁ。まぁな。
なんで俺たちが『チェイン』っていう名前を知ってるって断言でき・・・・・・」
― 「エリス、『チェイン』っていう女の人、知り合いにいないタトゥか??」
「チェイン??・・・・・知りませんね〜。誰なんですか??その人。」 ―
(第6話 チェイン・グラティス 参照♪)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
再び沈黙が流れる。それも重い空気。
テラは「タヒョタヒョ」と笑う。レオンとリウの目線は冷たくもテラに刺さる。
とりあえず、この二人の心情をまとめて読むと。
貴様かああああぁぁぁぁっっ!!!!!!!
「たたたたタヒョ〜〜〜!!!!」
「この海に水没してドザエモンと化した自称ドラゴンのハゲトカゲっっ!!!」
「むしろ、おめぇの場合は『海』というより幼稚園にあるプールで水没してそうだがな!!」
「あわわわ!!ちょちょちょ、待ってください!!おおおお、落ち着いて!!とりあえず、話聞いてください!!」
エリスの言葉で殴られはしなかったテラだが、二人の熱い視線を浴びたテラはすみっこで小さく縮まっていた。
「・・・・・・たしかにこの名前を聞いたのはテラからなんだけど・・・・・
でも、なんかね。どこかで聞いたことがあるようで懐かしいの。」
エリスはまっすぐにレオンたちの目を見た。
「お願いです。みんなが知っている『チェイン』っていう人のこと・・・・話してください。」
エリスの言葉を聞いて、みんなは顔を合わせる。
そして・・・・・エリスが存在しなかったあのときのことをすべて話した。
エリスはただ黙って聞いていた。
すべてを聞き終えたあと、エリスは・・・・・目を瞑って何か考えていた。
「・・・・・・・・・・やっぱり。そうだったんだ。」
「どういうこと?」
リウはエリスに尋ねた。
「私・・・・過去にも何回か突然意識がなくなることがあったの。
・・・・・・・・・・・・もしかしたら、私。二人居るのかなって。」
「・・・・・・・エリスたんが二人??」
テラはうむむっと考えていた。エリスはすぐに弁解する。
「いやいや!!これはあくまでも推測ですよ!!
『チェイン』っていう人も『グラティス』っていうからさ。」
「・・・・・・・・・それは微妙な意見だな。」
レオンは組んでいた腕を解く。
エリスとチェイン。
『二重人格』と言いたいところだが、中身だけでなくあきらかに外見も違うのでどうも納得できない。
しかしチェインはレオンの腕の中で消えた。
そう、彼女自身から放つ光に包まれて。
そのあと、マジックのごとくか。
チェインとエリスが入れ替わっていた。
ハッキリ言ってよくわからないのだ。
「・・・・・・それで、自分という存在と『チェイン』という存在を確かめようっていうのがこれからのことなのね??」
「・・・・・・・うん。」
リウの言葉にエリスは返事をする。
テラは座っていた椅子からぴょんと降りると、エリスの傍へ走ってきた。
「じゃあ、決まりタトゥねっ!!なんかこのまましゃべっていると一日経っちゃいそうな気がするタトゥ!!」
「えっ・・・でも、いいの??私のことなのに・・・・。」
エリスはレオンやリウの方に目をやる。
リウはふぅっとため息をつき、レオンも同時にふっと笑う。
「あたしはあなたを護衛するのが仕事。別に勝手についていってるだけだし、気にしないわ。」
「俺も勝手についてきてるだけだし、全然OKだぜ♪」
「よっしゃあ!!じゃあ行くタトゥよっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・みんな。ありがとう。」
エリスはにっこりと笑うと場の空気が少しやわらいだ。
「・・・・・・はぁ・・・・・・困りましたね。」
一同の後ろから声が聞こえた。
振り向いた先に立っていたのは、黒い服を着た男だった。