森の中はまさに神秘的と言えよう。
鳥がさえずり、小さな妖精たちが歌い出す。木々はかすれ、ザザッと鳴りゆくその音はなんとも言えない絶妙なハーモニーを奏でる。


「ららら〜♪水よ〜鳥よ〜♪」

後は付属品が歌わなければよしだ。


「そして〜のろいよ〜♪」


歌詞は最悪なわりには、メロディーが合う。
1番嫌なパターンにこいつは当てはまっていた。



我を〜癒した〜ま〜え〜!!♪


やめろや。


レオンの冷たいツッコミがのろいに直撃した。
っていうか、第一お前を癒すのは無理だ。


「まったく。人が機嫌良く歌っているのに、止めるとはいい度胸してるじゃない。レオン。」
「あのな〜。もっとマシな歌はねーのかよ。しかも、お前のオリジナルばっかだしよ。」
「あら、いいじゃない。私のセンスの見せ所なんだから」


のろいはそう言うと、再び歌い始める。
あなたのセンスを疑うわっと、リウは無言でご機嫌上々ののろいを睨んでいた。



ウォウルスの森に入ってから、しばらく歩いていたエリス一行。
のろいのテンションは会ったときから、この調子だ。
むしろなんかますます上がっていく。


「GO〜〜〜!!♪」



GOじゃねぇ。



「む・・・着いたわ。」

のろいがようやく歌うのを止めた。
皆は「やっと歌うのをやめたかコンチクショー」とかでも言うように、すがすがしい顔をしている。

皆の目の前には小さな噴水があった。
石や飾られている像は古く、細かな傷やコケなどがたくさんある。
噴水の真ん中に立つ少女の銅像の手と手の間には鏡があった。

「これが『鏡の泉』よ」

のろいは噴水を紹介すると怪しげに笑った。

「・・・これが・・・鏡の泉??」
エリスはそっと噴水に触れた。
長い時を刻んできた石から、ひんやりと冷たさ感じる。

「・・・さて。早くしなきゃね。」

のろいはボンっと、マジックのように杖を出した。
それを手に取り、また怪しくニヤッと笑みをこぼす。


「お邪魔虫が来ちゃったようだから」


のろいは出ておいでっと誰もいないと思われていた方向に声をかける。
すると、木の陰から人が出てきた。


「さすがは・・・クラノス・マレーナークを呪った者。気配を消していたにもかかわらず、我々に気づいていたとは。」

出てきたのは前に剣を交わしたミノサロウド。
そして、その仲間たちのクロ、ロウ、チルレット。

「ふん。あれで気配を消していたって言う訳なの。私もなめられたもんねぇ。」

のろいは鼻で笑うと、ミノサロウドを見た。


「用件は何かしら?」

「もちろん。エリスさんとチェインの統合の阻止ですよ。なんとしてでも我々は止めなければなりませんから。」

ミノサロウドはエリスへと視線を変え、さらに続ける。


「それに、今のチェインは弱っている。首を取るのはたやすいことでしょう?」


ミノサロウドは不適に笑うと、杖を出して構えた。

「ついでにお前らも消してやるよ。とくにこの前、俺の顔面に蹴りを入れたトカゲには借りを返してないからな。」

そうセリフを履いて出てきたのは、クロ。後にロウも続く。
前回のことをまだ根に持っているのか・・・クロはテラに向かって現在進行形で熱い視線を送っている。


「た、タヒョ・・・・の、のぞむところタトゥよ!!」

半分ビビり気味のテラは声を震わせながら答える。
正直、めちゃくちゃ心配。

「そうだなぁ。俺もまだ蹴りをつけてなかったからな・・・このメガネと。」

「私も・・・あの女とは蹴りをつけてないわ。」

お互い、前回戦った者とにらみ合う。



「わ、私も戦います!」

「ダメよ」

エリスがそう発言したとき、のろいはすぐに否定した。

「な、なんで?」

「あのメガネ君が言うように、チェインはだいぶ弱っているわ。おそらく、ヘタしたら今にも彼女の存在は消えてしまう。」

あなたはそれでいいの?っとのろいはエリスに向かって言った。
エリスは顔を曇らせ、うつむく。


「・・・・・・しかし。」

「大丈夫。」

のろいはエリスから視線をはずし、レオンやリウの姿を見る。

「彼らはすぐに倒れるような柔な奴らじゃないわ。」

のろいはエリスににこっと笑う。

「エリスちゃんは・・・・自分を捜す旅に今出ているのだから。彼女にはなんとしてでも会わなければならないわ。」

「のろいさん・・・。」


エリスはみんなを見た。
テラもレオンもリウもぐっと親指を立てる。



「・・・・私・・・みなさんを信じます!!」



エリスも答えるように親指を立てた。
そして、鏡の泉の前へと向かう。



「お願い。私を・・・鏡の泉へ。」


「・・・・・任せなさい。」



のろいは念じ、魔法を唱えると淡い光がエリスを包みそして、その光は少女の手に持たれた鏡へと消えていった。
やがて、のろいの持っていた杖に光が灯り、杖は何もしなくても立つようになっていた。




「・・・・・・以外にあっさりとしたものね。止めに入るかと思ったわ。」

のろいはミノサロウドに声をかける。


「その魔法は知っています。特殊魔法ですね。しかし、その特殊魔法を使っている間は、あなたは一定の距離しか動けない。」

「そんでもって、魔法もかなり制限される。おそらく、あんたのことだからあの泉にバリアを張ったんだろう。泉の遺跡が壊れないように。」


ミノサロウドの後に続いてクロが説明した。ミノサロウドはうなずくと、のろいに向かって笑う。


「つまり、あなたはもう魔法は使えない。それを我々は待っていたわけです。」

「遺跡を壊すとエリスはチェインとともに消えるしね♪」

楽しそうにチルレットは笑う。
のろいは鼻で笑うと、腕を組み何やら考え始める。

「さて。時間もありません。力ずくでもこの遺跡。壊させてもらいますよ。」





「やれるもんならやってみろよ」


レオンはカマを肩にかけると、ミノサロウドを睨む。
そして、ニヤリっと笑った。



静かな森で大きく始まろうとしている何か。
木々に止まっていた鳥たちは一斉に空へと飛び立った。







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