ピピッ ピピッ
ピッ
音が鳴る通信機の電源を入れる。
「・・・・・・・・・・見つけた。」
長い金髪を風になびかせながら屋根から町の様子を見渡した。
人々は新たな一日を迎えて動き始めていた。
その中にいた。
「・・・・・・・・任務・・・・・開始します。」
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大きな口を開けてうすく茶色に焦げた温かいケーキをぱくっと含む。
うっすらと塗られたバターと甘くとろけるハチミツが口の中で一気に広がる。これがなんともたまらない。
ゆっくり1、2、3と口を動かし始めた。それをごくんと飲み込むと満足げに顔をあげ、まさに「今、幸せだ!」と言った顔をする。
「おいしぃ〜タトゥ〜〜!!」
歓喜に満ちた声と満面の笑顔でテラは言った。
「そんな飢えに飢えてものを食べたような顔をすんなよ。」
「いや〜、まさにそんな状態だったタトゥが、もうそんなことよりここの料理はうまいタトゥ!!」
レオンは大げさだな〜っとテラの顔を見て苦笑する。
テラの笑顔はキラキラと輝いていた。
「そんな状態だったって、あのなぁ〜・・・・・・・」
言葉が止まったのは、レオンが言葉をはきながらエリスの方を見たときだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
まさに、テラと同じ状態。笑顔がまぶしくもう今まさに幸せ絶頂だという顔。
「・・・・・・・・・・・お前らな・・・・。」
レオンは言葉をなくした。
ごほんっと咳払いをし、レオンは改めて聞く。
「んで?これからどうする気だよ。」
「えっ?・・・・ん〜、とりあえず買い物〜?」
「金ないのにか??」
「レオンたんがいるタトゥよ〜!!」
このあと、テラが大きく宙に舞ったのは言うまでもない。
「まぁ、俺もちょっとだけ見てくかな。」
「決定ですね!」
両手を合わせてにっこりとエリスが微笑んだ。
その後に、今日のお仕事を探して〜♪っとエリスは考えながら立ち上がったとき・・・・・・。
何か違和感を感じた。
「あ・・・・・・あれ??」
「どうしたタトゥか??」
突然マヌケな声を発して、エリスは自分の服のポケットや首元などを触る。
その手が止まったかと思うと、どんどんエリスの顔色が青ざめていく。
「な・・・・・・・・・・なななななないいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
その声に一同はびくっと背筋を震わせる。
レオンとテラはエリスから目をそらすことができず、ぼーぜんと彼女を見ている。
「な、ないって・・・・・何がだよ。」
おそるおそる聞くレオンにエリスは涙目で振り返る。
「・・・・・・石。」
「はぁ?」
「首からさげていた石がないの。」
「石を首にさげていたタトゥか??」
テラの質問にエリスはこくんとうなずいた。
「いったいどんな石だよ。」
「えっと、きれいな緑色の石で。ちょっとくすみがかかっていて。片手で人差し指と親指を合わせたぐらいの大きさです。」
エリスは石の特徴を説明しながら、片手で親指と人差し指で輪を作る。
レオンは仕方ないなっと言うかのようにため息をつき、歩き始めた。
「っで?今日、朝起きたときはあったのか??」
「はい。ありました。」
「とりあえず、タトゥはさっき通った道を探してみるタトゥ!!」
テラは走って人ごみの中へと入っていった。
「・・・・・・・・うぅ〜、すみません。」
「ほら、俺らも探そうぜ。まだ近くに落っこちてるかもしんねーからな!!」
しゃーねーなーっと笑顔を浮かべるレオンに少し安心するエリス。
同時に胸の鼓動が少し早くなったのを感じた。
― あれ・・・・・なんか私・・・・緊張してるのかな??
それは、今に始まったことではない。
彼を見るとなぜかこの気持ちが高ぶる。
「今は石を見つけないと」と、意識はするものの、やはり脳裏に彼がいるような気がする。
・・・・・・・・スズ・・・・ノ・・・・ト・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・えっ?」
「うぅ〜。」
エリスが声を上げたと同時にテラが小さな唸りを上げながら戻ってきた。
とぼとぼと歩きながらエリスの近くまでやってくる。
「・・・・・・・・・・・見つからなかったタトゥ。っていうか、人ゴミは人に蹴られまくるから嫌タトゥ。」
「マジかょ。しゃぁーねぇ。俺らもそっちを手伝うか!!もう一度よく探すぞ!!」
「わかったタトゥ。・・・・・あれ?エリスたん??・・・・怒ってるタトゥか??」
テラの言葉でようやくレオンはエリスを見る。
さっきとは様子が違う。町を見渡すその目はどこか遠い。
「・・・・・・・・・・・どうした?」
「・・・・・・・・聞こえる。」
「聞こえるって何が・・・・・って、おいっ!!!」
問いに答えてすぐのこと。エリスは目をやっていた方向へと走りだした。
「な、なんなんだよ!!」
「とにかく追うタトゥよっ!!」
エリスが走り出した理由。それがどうしてなのかはわからない。
レオンとテラはすぐに後を追うことに専念した。
着いた場所は町の外。
エリスは走っていた足を止め、何かを見つめている。
それはエリスが探していた石。
石は光っていた。まるで・・・・エリスに反応しているみたいに。
なぜこの石が光るのか。なぜこんなところに落ちているか。
そんな考えはエリスの頭にはなかった。
その石を拾おうとした瞬間、レオンたちがようやく追いついた。
「拾うなあぁぁ!!!」
「・・・・・・・・っえ!!!!」
その言葉でエリスは我にかえった。
だが、もう遅い。
大きな爆発音とともにエリスの体全体が砂煙に包まれた。
同時にレオンたちにもその被害が及ぶ。
砂煙が邪魔で人影が見える気配はなく、レオンたちは目をつぶるしかなかった。
砂煙は納まるどころか、なぜかひどくなっていく。
「・・・・・・・・・エリスっっ!!!!!!」
レオンが名前を呼ぶが、返事がない。
砂煙の激しいところに自ら飛び込もうとしたとき、ようやく人影が見えた。
「おっと、お前の相手この僕だ!!」
砂煙の中から剣が見えた。それは、レオンに向かって切り裂いてくる。
レオンはそれをなんとか避けて、後ろに下がる。
「・・・・・・・・誰だお前。」
冷酷な声を振りかざす。それにも動じず、ゆっくりと近づいてきた。
・・・・・・・・一人の金髪をした少年だった。
「・・・・・・・・・あのお姉ちゃんはやれないね!あれは僕らがいただく。」
「はぁ?ふざけんなばーか。あいつは誰にもやれねーつぅの。」
レオンはそう言い終わると、ブォンと鎌を手の上に出す。
「残念だけど、あのお姉ちゃんはもういないよ。もう一人がもう殺しているさ。」
「あぁ?!二人いるとは、卑怯なこったな!!・・・・しゃあねぇ。マジでいくか。」
っと、構えたそのとき。ドサッと砂煙の中から人が倒れてきた。
レオンと金髪の少年は音のした方へと顔を向ける。少年はハット倒れてきた人の方へと向かった。
「なっ?!大丈夫か?!」
「・・・・・・・どうやら仲間だったみたいね。」
サラッと金色の長い髪を揺らしながら、もう一人。砂煙の向こうから姿を現した。
背は低く、小柄な女の子。見る限り、子供のようだ。
「・・・・・・・・すっごく弱かったよこの子。こんなんでここに来たなんて、ばかじゃないの??」
「・・・・・・・お前は一体・・・・・・・・・!・・・お前・・・・ま、まさか!!」
ドスッ
それは一瞬のことだった。
はめていたグローブがどんどん一本の棒へと変化し、一気にそいつの腹へと突かれたのだ。
少年はかはっと息を吐くと、そのままその場に倒れてしまった。
「・・・・・・・・今回は見逃してあげる。次はないと思ってよね。」
持っていた棒で地面に魔方陣を書き、発動させると黒い風が倒れた二人を包みやがて消えた。
「・・・・・・・・・ふぅ。大丈夫?」
「・・・・まぁ、なんにも攻撃受けてねーしな。」
「そ、それより!!あんたなにもんタトゥか??」
棒となっていた物を元の黒いグローブ戻した。
長い髪を邪魔そうに後ろに振り払いながら、レオンたちの方へ近づいてきた。
「・・・・・・・・私はコルジナBG機関本部所属のリウ・ティルナ。よろしく。」