見渡す限り木・・・・木・・・・木・・・・木。
そう、ここは森の中。虫もいればさまざまな動物もいる。

ピシ ピシと音を鳴らしながらエリス達一行は歩いていた。
ここを越えれば町。


・・・・・・・・・・のはずなんだが。



「・・・・・・・・どうしたタトゥか??」
「・・・・・あれ?・・・・迷ったかも。」

「・・・・マジかよ。」
「だから私はあっちって言ったんじゃん。」


一同はふぅっとため息を吐く。

この森はヒキの森。
きれいな森だが魔物も多少出る。
広いゆえに迷いやすい。まぁ、こんなのは森のルールみたいなものだ。

町と町の間にある森で、ここを通らないと次の町アルハナには行けない。
エリスたちは迷いながらも必死に出口を探していた。


「ってかさ〜。お前飛べねーのかよ。ドラゴンだろ〜??」

「こんなちっさな体でどうやって人乗せるタトゥか。それにタトゥには羽がないタトゥ。」
「はぁ?!・・・・って、そーいや〜ねーな。お前それでもドラゴンかよ〜。」

「うるさいタトゥねっ!!羽のないドラゴンだってこの世には存在するタトゥよ!!!」
「トンボだって羽あるぞ。トラゴンフライ。」
「だーーーーっ!!!!!」

「うっさいわね。もう少し静かにしなさいよ。」
「け、喧嘩はやめたほうがいいかと思いますが・・・・。」

テラをいじめるレオンを見ながら自分は何かおかしいなっと思うエリス。
どうかしてる。それは、最近ずっと彼を見ている・・・・いや、見てしまうせい。

意識してないはずなのに、視線が動く。まったく矛盾している。
ふっとエリスは笑いながら足を1歩1歩前へと進めた。


「・・・・っだーーーーーーー!!!もう怒ったタトゥ!!」
「あそ!がんばれぇ〜♪」

「ちょっと静かにしてよね!!」




「そうよ・・・・・・しなきゃ・・・おこっちゃ・う・ぞ。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


一同は止まる。呼吸も声も・・・・そして、動きも。

エリス、レオン、テラ、リウ。
ここには3人と1匹しかいないはず・・・・そう思っていたと言ったほうが正しいのだが。
その声はテラの後ろから聞こえていた。

一同は恐る恐る後ろを振り向く。

「・・・・・・もう近所迷惑じゃない・・・・・・」





「でででででででで出たああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」



ドバキャっっ


テラが叫んだ瞬間、思いっきり吹っ飛ばされる。
テラは宙に舞いやがて果てる。

「・・・・・・・・・・だから、近所迷惑って言ってるでしょ。」

黒のローブ、紫の三角帽子、そして、紫の長い髪の女性。
目の色は紫で澄んでいたが、あきらかにオーラが怪しい。
さっきから発する声は低く、暗く、少しかすれている。

「あれ?・・・お前もしかして・・・・・」

レオンはじっとその女性を見ながら考え、ぱっと明るい顔をしたと思えば暗い顔を見せる。

「・・・・・・・・・なんでここにいるんだよ・・・・。」
「何?・・・この怪しい女の人は。あなたの彼女??」
「ちげぇよっ!!!」

その冷淡な声にレオンすぐに反発をした。
リウはそれを見てクスっと笑った。

「焦ってる。」
「こんなの彼女にするんだったら三途の川を渡ったほうがマシだっつーの。」

「・・・・・・・渡ってみる??」


ズイっと目の前に出されたフラスコ。
その中には暖めていないはずなのに濃い黒目の紫色をした液体(?)がゴポッゴポッと泡をはじく。

「・・・・・・・・・・・飲む??一口といわず一気に。」

「遠慮しときます。」

レオンは嫌な汗をたらたらと掻きながら両手でフラスコを押し返した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「・・・・・っで?この人はいったい誰なの??」
リウはコップを両手で持ってレオンを睨んだ。


現在地はさっきのあの女性の家。森の中にひっそりと立てられた小さな木の家だった。
しかし、同じヒキの森のはずなのに環境があまりにも違いすぎる。
まず、雰囲気が違う。この森からもあの女性のように謎のオーラが感じられる。
そして、なぜかここの木の葉はすべて紫色に変色している。

例えるならば「異世界」っと言っておくべきか・・・・。


「あぁ、こいつの名前は『のろい』ってんだ。ちょっと変わった俺の友達だ。」
「変わりすぎタトゥよ。」





その突込みがいけなかった。


言っちゃあいけない。自分でもわかっていたはずだった。
けど、なぜ言ったのか。心に残るのは後悔ばかり。

最後に見えたのは『のろい』と呼ばれた女性の輝かんといわんばかりの満面の笑顔。


「・・・・・・・・ちょっといらっしゃいな。」
「いいいいぃぃぃややああぁぁぁだあぁぁぁぁ〜〜!!!!死にたくないタトゥ〜〜!!」


バタン


ズルズルとどこかの部屋へと拉致されたテラ。


そして・・・・・



「ぎゃああっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



今、途中で止まった?!悲鳴が途中で止まった?!?!!


声には出ない突込みを心の中で叫ぶ一同。
そう、彼らはちゃんとわかっていた。突っ込んじゃいけないことを。

「おほほ。ごめんなさいね。」

何事もなかったかのように、のろいは部屋から出てきた。

「じゃあ、続きを話しましょうか。」

もちろん、誰も「テラは??」なんて聞く人はいない。


「私は紹介されたとおり、『のろい』って言うわ。よ・ろ・し・く。」

無表情のまま、リズムに合わせて人差し指を左右に振る。
なんどもしつこく言うようだが、誰も突っ込まない。


「突っ込んでよ。」


― 嫌だ。


「・・・・・・・でも、あなた人間じゃないわね。かといって、エルフとかそんなんでもないし・・・・。」

リウが難しそうな顔をして聞く。
のろいはそんなリウを見てぽっと照れる。

「種族・・・・は無いわね。しいて言うならば人間というべきかしら??」

「ちょ、ちょっと待って!!どういうこと?!ってか、今の反応何よ!!」

リウはガタンとイスを鳴らして立ち上がった。
さっきのろいの反応を見てあせったのか、声がちょっと裏返っている。


「・・・・・・・・・気にしないで。」

「・・・・・・・・・・」

その先を聞く気を無くしたリウは、黙ってすとんとイスに座った。
心なしか沈んでいる。


「・・・・・私はすでに死んでいるのよ。この体もある人物をコピーしたものにすぎない偽の体。私が実際に生きているのは魂だけなのだから。」

にっこりと笑みをあげるとなぜかリウにウィンクする。
それを何事も無かったかのように、リウは顔を背けた。


「・・・・・・・・・・クラノス・マレナーク。」

「!!!!」

のろいが発した言葉に凍りつくようにリウは背筋がぞっとした。
リウは顔を上げるともう一度確かめた。

「・・・・・ク、クラノス・・・・??」

「あ、あの〜。それって、誰なんですか??」

今まで黙っていたエリスが口を挟む。

「・・・・・・・・ここの世界じゃない。向こうの世界の人間。いや、そうとわかったわけじゃないけど・・・。」

「・・・・・・・・・その人はいったい??」

「・・・・・世界最強のタイムサモナーよ。」

リウは一通り説明を終えると、ふぅっと息を吐いた。
世界最強・・・・・この言葉にエリスはびっくりする。

「タ、タイムサモナー??」

「・・・・・・・・時、次元、空間を操る魔法使いよ。」

エリスの質問に続いてのろいが答える。

 
「・・・・・・でも、なんでその人の姿をコピーできたのよ。」

リウが腕を組みのろいに聞く。
のろいはまたぽっと照れて、コホンと咳をひとつ落とすと真剣な顔に戻る。

「・・・・・・・私がクラノスを呪っていたからよ。むしろ、とりついていたと言ったほうがいいかしら??」

「・・・・・・・・・あぁ、世界最強の名が・・・・・。」
 

リウが机に手をついて心の底からがっかりする。
そのクラノスとはどんな人物なのか・・・・ものすごく気になった一同。


「さて、私への質問はこれくらいにしておいて・・・・・レオン??」

冷めた声でレオンに声をかける。
その声にびくぅっと反応して嫌な笑みをのろいに見せる。

「な、何だよ・・・・・??」

「そういうあなたこそ、なんでこの世界にいるのかしら??お仕事の方はどうしたの??」

にこにこと笑いながら人差し指を左右に振る。
レオンはやっぱ聞いてきた・・・・っと、いった表情を残してコホンと咳をひとつする。

「まぁ、これが今の俺の仕事ぉ?みたいな。」
「うそおっしゃい。」

冷めた突っ込みを入れるのろい。
これがまた痛い・・・・・。


「・・・・・・・・・・なんだっていいだろぉー??ここに俺がいようがいまいがお前にはカンケーねーんだから!!」

「・・・・・・・あるわよ。まったくもって、目障りよ。迷惑が私に降りかかっちゃう。」


その言葉にズーンとレオンは沈む。
のろいはその様子を見てクスッと笑う。

「冗談よ。私がそんなこと言うわけ無いじゃない。」

「顔がマジだったんだけど。」

「それは演技よ。え・ん・ぎ♪」


にっこりと満面の笑みを見せる。
レオンは呆れてものをいう気にならなかった。


「とりあえず、今日は暗いからここで休んでいきなさいよ。」

「・・・・・・・・・・。」




いや、ここで泊まるのか??
暗くて、不気味で、変なオーラが漂う中、ベッドの中に入ってすやすやと眠りにつくのか?!



っていうか、それ以前にこいつが問題だ。寝ている隙間・・・・いや、起きているときでも何かありそうだ。
トイレにもお風呂にも一人で行けない!!



「もう暗いしね。」


わかるの?!わかるのか?!!?!こんな不気味で暗い森なのにどうやって昼と夜の見分けがつくというんだ!!
あぁ、先行きが怖い。明るい未来が見えてこない。もう肩に手を添えられたときなんか・・・・・・・・

あああああああぁぁぁぁぁぁ!!考えたくない!!



そんなことを思い思いに考えながら、一同は黙り込む。



ポン



「泊まるの??」


「はあぁわうぅぅぅぅ〜〜〜!!!とととととと、泊まりましゅうぅぅ!!!!!!」

「「おいっっ!!!」」


のろいが手をエリスの肩に添えてポソッと言うと、エリスは半泣きになりながら叫んだ。
そこに、レオンとリウは激しく突っ込みを入れる。


こうして、なぜか泊まることになったのだ。この家に。


大変な夜になりそうだ。きっと、眠れない夜になるだろう。


・・・・・・・・・・・・いろんな意味で。










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ん?










そういえば、テラは??






















どこに行ったのか。






のろい「・・・・・・・・・・・・質問はうけつけません。」


だそうです。