「なんか妙なとこに来ちゃったのね。」

空の上から辺りを見回す。
彼女は下にある魔方陣を利用して空を飛んでいた。
景色はとてもきれいと言えるだろう。
そして、彼女は一つの宿に目をつける。


「・・・・ふふっ。いたいた。」

悪戯を思いついたような笑みをこぼすと、手に持っていたナイフを腰のホルダーにしまった。


「・・・・・・・・・・見つけたわよ。レオン。」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ぬわあっっ!!!!」

突然、声をあげてレオンはベッドから起き上がる。
まだ朝は早い。彼は時計を見るなりそう思った。
額には汗が流れ、着ていたシャツはびっしょりと濡れていた。
レオンはすべてが夢であったことを認識し、ふぅっと安心の息を吐く。

しかし、またすぐにその不安が波となる。

「・・・・・・・・・・・・・・・やべぇな。今日あたり。」

レオンはそうつぶやくとシャツを脱ぎ、着替え始めた。


あの不気味な森から出たのは今から数時間前。
エリス達はあの後、森の中を迷いに迷い、そして、ようやく町にたどり着いた。
時はすでにとっくに日が落ちたころだった。

ただ、間違ってもあの森の中では二度と休息などとりたくなかった。
とったら奴が来ると思ったから。
そう、あの森にいた不気味な女性。

のろい「・・・・・・不気味って何よ。

・・・・・こいつだ。

とにかく、そんなこんなで今は町の宿で休息をとっている。


一晩中かかっても森から出ることを先決し、ようやく見つけた町。
ここにいる事がそれらのすべてを物語った。

しかし、そのことは過去の経歴に過ぎない。

レオンはまた新たな別の壁に悩まされていた。
彼にとっては・・・・・これよりもっと重要な事なのかもしれない。

夢に映し出された人の影。何かが起こるような予兆。
それが波となり、ひしひしと感じられる。

「・・・・・さすがにこれだけ時間が空いたら気づくわな。」

ボソッとつぶやくと、マントを持ってドアを開けた。


外にはすでにエリス、テラ、リウがそろっていた。
三人とも驚いた顔でレオンを見ている。

「な、なんだよ。」

「・・・・・・・あなたにしては早いじゃない。」

「早いですね〜。」

「うん。早いタトゥ。」

いつもならもう少し遅く、なおかつ眠そうに皆のもとへやってくるのに今日は早い。
そう思った三人は口々にレオンに言葉をぶつける。

「なんか悪いもんでも食べたの??」

「あのなぁ〜。俺だってそういう日はあるんだよ。」

と言ったのは、いいわけだと自分で自覚するレオン。
今朝見たあのおぞましい夢が脳裏によみがえる。


「じゃあ、出発しましょう!!」

「そ、そーだな。」

エリスの声に我に返り、レオンは笑顔を作った。







「それにしても、すごい人ね。朝だというのに。」

リウが朝食代わりにりんごを頬張りながら、歩きはじめる。
それをテラが欲しそうに見るがもちろんリウは無視。

「私はけっこうにぎやかは好きですよ!!」

「・・・・私はあんまり好きじゃないけど。」

リウはエリスの言葉を切るように言うと、食べていたりんごをテラに渡した。
テラは目を輝かせながら、りんごにかぶりついた。

「ここは港町だからな。朝からにぎやかなのもそのせいだな。まっ、いいんじゃねぇの♪」

さっきまで黙っていたレオンが楽しそうにそう言うと、朝のレオンの様子を気にしていたエリスも「よかった」と安心するように笑う。

だが・・・・・・・・すぐにその笑みは奪われた。

人気の少ない道に出ると、レオンは急に表情を変えた。
戦闘モードに入ったレオンの顔。まさに凛々しい・・・・いや、険しいっと言った表情に。


「・・・・・・・・どうしたんですか??」

「・・・・・・・・・わりぃ。ちと俺、先に行くわ。また後でおちあった方が良さそうだ。」

「はぁ??どういうことよ??」

レオンはリウの問いに答えず、前へと足を出した。







「レッオ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!www」




まさに一瞬とはこのこと。

後ろから声が聞こえたと同時に、レオンが皆の視界から消えた。
皆はもちろん。後ろから聞こえた声に振り返っていて消えたレオンには気づかない。
気づいたときにはレオンは地面に倒れており、上には大人っぽいきれいな女性がレオンに抱きついていた。

まぁ、ようは押し倒されたのだ。


「もー!!ひさしぶりぃ♪元気してたぁ??」

「・・・・・・・・。」

レオンはものすごく不機嫌な顔でその女性を睨んでいたが、女性はにっこりと暖かい笑みで返す。
突然のことに、皆は固まるしかなかった。


「あ、あのぉ。・・・・レオンさんの知り合いですか??」

「・・・・・・・・知り合いじゃねぇって言いてぇ。」

レオンは頭を抱えながら、エリスに遠まわしで答える。
と、その女性は目に大粒の涙を浮かべて・・・・・・・・。

「ひ、ひどぃっっ!!2ヶ月も家と私をほったらかしにして、連絡もしなかったくせに!!」

「あ、あのなぁ〜。」

「しかも、こんなにかわいい彼女を連れちゃって!!」

「へうっ?!わ、私?!?!」

「・・・・・だぁぁぁぁあああ!!違うってのっ!!」

「うわっ、サイテー。」

「あのなぁっっ!!!!!!!」

女性に指摘されたエリスは混乱し、リウは話の状況を掴みレオンに冷たい言葉を放つ。
レオンは突っ込みきれないとでも言うように、下を向いてうなっていた。


さて、この女性はいったい何者なのか。

でも、今までの話を聞いていたら予想が出来た。
きっとそれしかない。あの人は――


「・・・・・彼女っっ!!!!」

「違げぇよ!!!!!」

「きゃぁw彼女だなんて!!はっずかすぃ〜〜!!ww」

「楽しんでんじゃねぇ!!」


あぁ。きっとそうに違いない。
エリスはそう思うと、胸が少し痛んだ。


「あぁもう!!いいかげんにしろよ!!アネキ!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


レオンの一言で場が静まる。
同時にその一言で混乱していたエリスや、ぼーっとしていたテラはようやく場の空気を読むことが出来た。


「・・・・・・・・・お姉さん??」

「・・・・・・・・・そういうこと。」

レオンはふぅっとため息をついた。
ふふっとレオンのお姉さんは笑うと、すっくとその場に立ち上がった。


「ごめんね。いやぁ〜、二ヶ月ぶりだったもんでうれしくなっちゃってww
                               お姉さん暴走しちゃったぁ♪」

「しちゃったぁ♪じゃねぇよ。」

レオンがすかさず突っ込むが、姉の裏拳によって再び地面へと落ちる。


「私の名前はディール・ランディ。レオンのお姉さんよ!!ww」

「・・・・・・・・・義理のだけどな。」

顔面を押さえながら、レオンは起き上がった。
姉の冷ややかな笑みを見ると、レオンはそっぽ向いて咳をコホンと一つこぼす。


「まぁ、地上最強の仲のいい兄弟であることには変わりないわよ〜♪」

レオンはそっぽ向いたまま動こうとしない。
そんなレオンを見ながら、ディールはレオンに問う。


「・・・・・・・・・・・・っで?レ・オ・ン??ww
        二ヶ月間。任務で空の森に行ってたの??」

「ぎくっ・・・・・。」


レオンはカタカタと姉のほうに顔を向ける。
ディールは相変わらず、その反応に笑顔で答える。その笑顔は輝いていた。

「嘘なんてつく気はないわよねぇ〜?」

「・・・・あぁ〜。わーったよ。えーとなぁ。さ、探し物だな。」

「・・・・・・・家の鍵とか??」

「違げぇよ。」

リウがレオンを茶化す。
レオンはリウを少し、睨んで目を伏せる。

その目は明らか焦っていた。


「・・・・そう!!鍵・・・・・相互の鍵だっっ!!話によるとこの世界にあるらしいし!!」




ドクン


相互の鍵。


その単語が出た瞬間、エリスの胸の鼓動が強く打った。
どこかで聞いたような気がする未知の言葉。

でも、記憶にはない。


― ・・・・・なんだろう。この変な感じ・・・・・・



「・・・・・・『相互の鍵』って昔、空の森に出現した大悪魔を封印したトビラの鍵でしょ??
                       あんなの伝説級のおとぎ話じゃない。見つかるわけないでしょ。」


ディールはふふんっとレオンに言う。
レオンはちっちっちっと、人差し指を振りながらニヤリと笑う。


「アネキは甘いなぁ〜。そういう考え方が物事をひっくり返すんだぜぇ〜??」

「・・・・・・・・誰が甘いですって??」


ディールはそう言うと、すばやくレオンの後ろに回り足払いをすると、レオンはあっさりと体制を崩した。
地面に倒れたのをいいことに、のしっとレオンの背中に乗るとニマッと彼に笑みを見せた。
レオンは「ははは。」と、冷ややかな笑みで返す。


「・・・・・その言葉。私とレオンのどっちのほうが向いているのかなぁ〜?」



うつぶせになっているレオンの腕を自分の腿の上に乗せて、あごを持つとキャメルクラッチを決行。
ゴリゴリゴリっとこの場にいやな音を鳴らす。

「いてててててててて!!!!!!!ギブっ!!ギブっっ!!!!」


姉の攻撃に耐えられず、即ギブアップ宣言を出すレオン。
「よろしい♪」っとディールは満足そうに言うと、すっとその場に立ち上がった。


「・・・・・・・・・まぁ、とりあえずそういうことにしといてあげる♪」


「・・・・・・・・・ってててて。アネキのほうが甘いってことをか?」


「うふふふふww第2ラウンド逝く??w」


指をポキポキ鳴らしながら、ディールはレオンに言った。
レオンは「冗談冗談」と笑って言った後、姉の前にすぐさま土下座をして「すみません」と謝った。




まさか今朝見た夢がそのまま現実となるとは。


レオンは俺の嫌な予感は当たってしまうんだなっと土下座から頭を上げるとそう思った。





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