もぞもぞとベッドの中で身動きする。
ふかふかのベッドは気持ちいいけど、なぜか寝心地が悪い。
「ふ・・・・・ん・・・・??」
ゆっくりと目を開ける。
そこには・・・・・・・・・
「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
ドゴオオオォォォォズズズドガアァァン
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「よー!おはよう!!おはよう!!」
「おはようじゃありませんよぅ!!なんで私の布団で一緒に寝てるんですかっ!!!」
そう、エリスが目を覚ましたとき。目の前にレオンがいた。
どうやら昨夜こっそり入ったらしい。
「いや〜、なにせこういう場所が場所だろ??怖くて一人じゃ寝れないんじゃないかと添い寝を」
「しなくていいです。」
エリスは顔を赤らめてはうぅぅぅっと情けない声を上げる。
レオンはその様子をニヤニヤと笑いながら見ていた。
「それより、すごい音しませんでしたか??」
「なんかお前以外の悲鳴も聞こえたような気がしたんだが・・・・だいたい何が起こってんのか予測はできるな。」
二人はベッドから降りるとリビングへ向かった。
「おはようタトゥ。」
リビングへ通じるドアを開けるなり、テラがさわやかにレオンとエリスにあいさつする。
いつもと何か違うような気がした。いや、ぶっちゃけ違うだろ。
「お、おはよ。テラ。」
「おう!おはよーさん!!」
エリスとレオンが返事を返すとフッとさりげなくかっこいい笑みを残し、テラは去っていった。
― 昨日、何があった??
なんてことは、決して彼らは聞こうとしなかった。
「・・・・・・・・おはよ。」
言葉に詰まる中、リウが割ってあいさつをしてきた。
めちゃくちゃ沈んでいる。
「お、おはようございます!だ、だだだ大丈夫ですか??」
「おはよう。やっぱりお前か。いったい何があったんだ??」
エリスとレオンが口々に質問をする。
リウがふぅっと息を吐くとドアに向かって指をさす。
「お・は・よ。」
「朝起きたら、こいつが一緒に寝てた。」
指を指した方向には、ボロボロになって流血しまくっているのろいがにっこりと笑いながら手を振っていた。
そりゃあ、沈むわなっとレオンは心の底から思う。
「・・・・・・・・あぁ、ここまで寝覚めの悪い朝はないわ。人生最大の屈辱。」
「リウちゃんったら・・・寝てたらあーんなことやこーんなことしちゃうし。そのうえそーんなことまで」
「な、なによっ!!私が何をしたって言うのよっっ!!!私は何にもしてないわよっ!!」
こんなに動揺したリウを見るのは初めてだ。
一同はそのようすをぼーぜんと見ていた。
「あら、言っていいの??」
「・・・・・・・・・・・。」
「はぁ・・・・・・・じつはね」
「ああああぁっ!!やっぱ言わなくていい!!」
リウは冷や汗をかきながら、のろいにストップをかける。
のろいは残念そうに、クスッ不気味に笑った。
一同はそのようすにかなり驚いた。
なにせ、普段はクールで動揺を見せないリウがここまで攻められるとは。
おそるべし、のろい。
「・・・・・・・・・・うぅ。じゃあ、話し切り替えるわ。この際だからここを出発する前に言っておきたいことがあるの。」
リウが髪をくしゃっとかきあげながら言う。
「あら、もう一泊泊まっていってもいいのに。」
「絶対いや。」
リウとレオンがハモる。
「・・・・・・・・・エリスがもつ石の話。この人に話すのは不本意だけど、ここなら私たち以外に聞かれることはないし。」
たしかに。
のろいは部外者であるが、ここなら誰も近づかない。
むしろ、誰が好んでこんな怪しく恐ろしい場所に来ると言うのか。
「その石は・・・・・・・・・」
「魔力を秘めた伝説の石・・・・・ってとこかしら??」
リウは声の聞こえたほうに目をやる。
声を出した張本人 ― のろいはクスッとリウに向かって笑った。
心を読まれた感覚に、リウは恐怖を覚える。
「・・・・・・・・・そこまでわかってたんだ。」
「まぁね。」
ふふんっとのろいは胸を張って勝ち誇ったような顔をする。
「・・・・・・・おぃおぃ。そんなヤバイもん・・・・こいつ持ってたのかよ。」
「や、やばいんですか?!これっ!!」
レオンの発言におどおどするエリス。
リウがコホンっとせきを一つすると、真剣な顔で語った。
「・・・・・・・・・・・この石はね。『聖光の石(セイントストーン)』って言って、世界に二つしか存在しないという伝説級の代物なのよ。
たった一つで白の木の1/4くらいの魔力がこの石に込められているの。」
「えぇっ?!そ、そんなにすごい石だったのですか。」
白の木・・・・・・その木は世界の柱といってもいい。
この世界を作っている木だ。例えるならば、地球を囲む宇宙のような存在。
つまり、一本の木の中に世界を作ってしまうほど膨大な魔力を持つ木なのだ。
その木の1/4。これは、本当にすごい量の魔力なのだ。
「・・・・・・・・・・・・だから、これからその石を狙ってエリスを狙うものが増えるってことなのよ。」
「うわ〜、人気ありまくりだな!!エリス♪」
「う、嬉しくない・・・・・。」
レオンは楽しそうに心底沈むエリスをちゃかす。
「だから、あなたとその石を守るために私が来たってわけ。
一番早いのは私がその石を回収してコルジナ本部に持っていくことなんだけど、それは嫌でしょ??」
エリスは少し考えてから、こくっとうなずく。
「まっ、これで理解してもらえたかしら?・・・・・・・・・・とくに、レオン・ランディ。」
「・・・・・・・・んまぁ、とりあえずそういうことにしといてやるよ。」
レオンはニヤリと笑う。
二人の意味深な会話に一同「?」マークを浮かべる。
「さぁて、話が終わったんならもう出ようぜっ!!」
「そうね。長居はしていられないわ。」
「・・・・・・・・・・・ゆっくりしていってもい・い・の・に。」
・・・・・・・・・・・・・・絶対嫌だ。
「あ、じゃあ・・・・一人で家にいてもつまらないし、私も一緒に」
「さぁ、出発だっ!!」
「おじゃましました。」
「ま、また来ますねっっ!!」
「ばいばいタトゥー!!!!!!!!!」
バタン
勢いよくドアを閉め、四人は家を出た。
のろいはクスッと笑うと、奥の部屋へと消えていった。