「それよりさ。こんなところで話すのもなんだからさぁ。そろそろ移動しない??」
沈黙を裂いたのはリウだった。
その言葉を聞いてコロッと表情を変えたのはディールとレオン。
レオンに至ってはなにか嫌な予感がしたのか・・・・・冷や汗が見られる。
「・・・・・・・そぉよねぇ〜〜wせーっかく来たんだしぃ♪ちょっと遊んでいこっかしらぁ♪♪♪」
「おぃおぃおぃおい!!!マテマテマテマテっっ!!!!なんでだよ!!」
「なんでって・・・・・遠出してきたつ・い・でw
1日くらい遊んだっていいじゃない。」
「一人で行動するんなら俺だって何も言わねぇよ。どーせ、アネキのことだから俺たちについてくる気なんだろ??」
「あら・・・・?」
その言葉。待ってました!!っとでも言うような笑顔を見せる。
レオンは当然のごとく、「やってもうたぁぁああああぁぁ〜〜〜!!!!!」っとでも言うように頭を抱えた。
「・・・・・やだぁwそんなに着いてきてほしいんならいつでもOKだったのに〜!!」
「誰もきてほしいなんていってねぇよ。」
「レオンは照れ屋さんだから遠まわしにしか説明ができないのねw」
ディールはうふふっと上機嫌に笑う。
もう突っ込みきれないのか・・・・レオンは反論もせずただ頭を抱えていた。
「どーでもいいから移動しようよ。足痛くなってきたんだけど。」
「・・・・・・・それならいいお店紹介するよ??」
リウが文句を一つこぼしたのとは別に、どこからか声が聞こえた。
一同は振り返るとそこには少年が一人、クスッと笑顔を見せて立っていた。
「・・・・・・?!」
「・・・・・・・・誰タトゥか??」
驚くリウに気づかず、テラは少年に聞いた。
「僕?僕は占い師だよ。トラスって言うんだ。
君たちのやりとりを見ていたんだけど、すっごくおもしろいね。」
にっこりと笑うその笑顔はどこか人に安心を与える。とても優しい笑顔だ。
しかし、リウはその笑顔を見てもいまだ驚いた様子を隠しきれないようだった。
レオンはそんな彼女を横目でじっと見ていた。
「っで?その占い師が俺たちになんの用が??」
「ん〜、用ってほどじゃないよ。ただの売り込みww」
「・・・・・・売り込み??」
エリスは首をかしげて聞く。トラスはもちろん笑顔で答えた。
「そーだよ。僕の占いをね♪最近景気が悪いから。あ、でもでも安心して!!今日はお金取らないからさっw」
そういうと、トラスはごそごそとカバンから透き通った水晶を出した。
水晶は日の光を浴びるとさらに輝きを増した。
トラスはボンっと杖を出すと、その水晶にコンと杖の頭を当てる。
「急ぐ用事がなければ・・・・・占いやっていかない??」
「いいんじゃない?暇つぶしになるし!!」
「おぃ。」
ディールの勝手な承諾で占いは始まった。
「えっと・・・・じゃあ、そこの焦ってる金髪の子から順番にいこうか。」
「・・・・・っ?!」
リウはいきなり指摘を受け、びくっと体を震わせたがいつもの冷静な顔に戻ると小さく「いいわよ。」っと返事を出す。
少年が目をつぶって水晶をコンとたたくと緑色の光が水晶を包む。
それは優しくキレイな光で、まるでホタルみたいだ。
少年はゆっくりとその状態で目を開ける。
「・・・・・・・気をつけないと、近いうちに悪いことがおきる。でも、それは大きなことではない。
なるべく行動は控えめにしたほうがいいよ。」
「うっ・・・・。」
「次に、トカゲくん。」
「・・・・・・・ドラゴンタトゥ。」
「君には大きな道がこれからいくつか別れるときが来る。おそらく、どれを選んでも大丈夫だろう。
ただし、周りの人に迷惑がかかることになるよ。」
「おぉ〜〜。なかなかいいかもしれないタトゥ!!」
「周りの人らはぜんっぜんよくねぇよ。」
目を輝かせるテラにレオンはすかさずつっこんだ。
そのやりとりにトラスはくすっと笑うと目をエリスへと向ける。
「んじゃあ、次はそこの長い髪のお姉さんね。
・・・・・・・・・・・・これもまた大きな選択肢が目の前に立つだろうね。それも近いうちに。」
「はぁ。」
「・・・・・時は急いだほうがいいみたい。早めに事に気づくことが全てを成功させる鍵となるよ。」
「・・・・・・・事に・・・気づく??」
エリスはその言葉に心が揺れた。
この占いがいい結果なのかそれとも悪い結果なのか。
なんとも言えない結果だが・・・・・。
「じゃあ、次はそっちのお姉さんね。運勢はしばらく好調だよ。仕事も遊びも充実しそう。
でも、その後の波が来る。それは、自分しだいで運勢が変わりそう。」
「ありがとっ♪」
「んじゃあ、最後は金髪のお兄さん。今日はベラボーに運勢が悪い。隠し事はやめたほうがいいよ。バレるから。」
「ぐはっ。」
「でも、このまま活動していけばいつかは探し物が見つかる。まぁ、要するにあきらめないでがんばれっっ!!ってこと。」
「・・・・・・そっか。」
トラスは言葉を言い終えると、杖を水晶から話す。
水晶はやがて光を失い、元の球状の輝く石へと変化する。
「・・・・・・まぁ、占いだからそんなに気にしなくてもいいんだけどね。信じる信じないは自分次第だし。
でも、自慢じゃないけど、結構当たるよ♪」
「もうめちゃくちゃ当たってるわ。」
レオンはそう言うと、さらにへこんだのか。肩を落として重いため息を吐いた。
「ふぅ。じゃあ、僕はもうそろそろ行くね。僕もいろんなところ旅しているから・・・・・また会えたらいいね!!」
彼はそういうと、スキップしながら去っていった。
彼・・・・トラスという少年の占いが当たっているかどうかはさておき。
「・・・・・・・・んで?なんでそんなにあいつを見て驚いてたんだ?リウ。」
「えっ・・・!!」
リウはうっと考え、ため息を吐いた。
すると、急に目つきは変わりその表情は真剣そのものに。
「・・・・・・あなたたち。気づかなかったの?彼が来たこと。」
「はぁ?あったりめーだろが。だってアネキがいたし。」
「何よそれ。」
「・・・・エリスたちは?」
「わ、私も気づかなかった・・・・。」
「タトゥも・・・・って、おかしいタトゥよね。」
気配がなかった・・・・?
みんなは急にぞくっとした。
人・・・いや、動物というのはどうしても気配を感じるときがある。
後ろに人がいる。あそこに見えないないかがいる・・・・っという風に。
レオンはともかく、テラとエリスについては黙って見ていたはず。
それでも、気配や足音に気づかなかった。
そう、彼に話しかけられるまでは・・・・・。
しかも・・・・・・
「・・・・・しかも『やりとりを見ていた』って言ったわ。 私たちのそばにいた時間はどうやら短い間ではなさそうよ。」
「だよな・・・。いったいなんなんだ??あいつは。」
「でも、ただそれだけじゃないですか。別に、私たちにとってそれが危険となることはないんですし。」
「・・・・・そ、そうね。」
エリスの言葉にリウはこくっとうなずく。
たしかに、彼女の言うとおり。だからといって危険に巻き込まれることはないのだ。
ただそれだけの話。そのことにしかすぎない。
「お前警戒しすぎだって。もっと気軽に行こうぜ♪」
「・・・・・・・・あなたは警戒しなさすぎるだからお姉さんに押し倒されたんでしょ??」
リウの冷たい言葉はレオンの心にグサッと何かを刺した。
− 夜 −
「・・・・・・なぁんか寝れないなぁ。」
あたりは真っ暗、時計の針は12時を切って日は変わっていた。
あの後、ディールにいろんなところを振り回され、疲れたエリスはみんなより先に寝てしまった。
そんでもって今、目が覚めてしまって寝れない状態におちいっていた。
「外でも歩こうかな・・・あれ??」
閉め忘れたカーテン。その窓から二人の影が見えた。
ディールとレオンの後ろ姿。
エリスはそっとベッドから床へと足をつけた。
「・・・・・・・・・あんたの捜し物・・・鍵じゃないんでしょ??」
「・・・・・アネキには最初っからわかっていたんだろ?俺が遠出してここへ来て探してるものを。」
「・・・・さぁ?わからないわね。予想ならできてるけどね♪」
ディールはうれしそうに笑うと、ストンっとベンチに腰を下ろした。
レオンはやっぱりなっと顔をしかめるとレオンもベンチへと腰掛ける。
「・・・・・・まだ忘れられないの??”あの子”のこと。」
「・・・・・・・・あぁ。まぁな。俺は・・・あいつを見た。死んだはずのあいつを。」
レオンは悲しそうにふっと笑った。
レオンはその”あの子”の話をすると、こんな風に悲しそうに笑う。
その顔を見るたび、ディールは心の奥がぐっと痛くなった。
ディールはレオンから顔を背けると、ため息を吐いた。
「・・・・・・・・初恋の彼女・・・私も一度見たかったわね。」
「・・・・・・・セルシェ。」
重い沈黙が流れる。
ただ聞こえる音と言えば、虫の鳴く声とかすかに聞こえる水の流れる音。
「まだ探すの?彼女のこと。」
「あぁ。あいつがここにいるのはおそらく間違いないからな。」
ディールは「そっか。」っと言うと、ベンチから立ち上がった。
「もうそろそろ行くわ。私はレオンの様子を見に来ただけだから。あさってから仕事もあるしね。」
「そっか。」
ディールはうんっと背伸びをすると、指で空に小さな魔法陣を描きだした。
魔法陣は金色にキラキラと光り出す。
「それと・・・・彼女。気をつけてあげなさいよ?」
「あぁ、セルシェのことか?」
「違うわよ。」
魔法陣を書き終えるとレオンの方に向き直る。
腰のホルダーからナイフを出し、レオンへと向けた。
「あのハーフエルフの女の子。」
「あぁ。エリスか。」
「これからいろんな人につけ狙われると思うわ。」
「・・・・だろうなぁ。」
くすっと笑うと魔法陣にサクッとナイフを突き刺した。
すると、黄色い光がディールを包む。
「たとえば・・・・もう近くにいるかもよ?」
「ぷっ・・・だろうぉな。まぁ、そこらへんは任せとけって♪」
レオンはディールに向かって手を軽く振る。
ディールはウィンクを残すと、黄色い光とともに姿を消した。
あたりはまた暗闇と沈黙にもどる。
電灯の光が優しくベンチをうつし出す。
「・・・・・・・・・・さて。もういいんじゃねぇか?エリス。」
「うっ・・・・」
こそっと細い道から彼女は顔を出した。
その様子にまたレオンはぷっと吹き出す。
「ごめんなさい。」
「まぁ、いつかはバレるだろうと思ってたからいいけどな。
ほとんど話は聞いただろ??」
「・・・・・・・・・・はぃ。」
エリスは顔を赤らめながら、反省した顔でレオンの隣に座った。
「・・・・・俺は人を捜しに来たんだ。大切な・・・・人をな。」