ザシュッ


鈍い音をその場に残し、悪魔が血を出して倒れる。
レオンは横目でそれを見送り、血のついたカマを肩へとかけた。


「・・・・・おわんねぇー。」

「数が多すぎるわ。」

剣へと変えていたグローブを元に戻し、再びリウは構えた。

すっかり暗くなった空、異様とも言えるこの殺気。
この気配を感じてリウたちが外に出ると案の定、悪魔の大群が町へと近づいていたのだ。

選んだ場所は町の入り口から少し離れたところ。なかなか広くて戦いやすい場所だ。
ただ後ろに町があるため、不用意に魔法は使えない。
使う時と言ったら、相手の魔法を返す時くらいだ。

騒ぎになるのはメンドウな事。
そして、なによりもそれによって大きな被害に繋がるかもしれないという危険も背後についていたからだ。

レオンはちっと舌打ちをすると、またカマを構える。


「・・・・だりぃな。こりゃまぢで。」

「愚痴ってる暇があるんなら、早く戦いなさいよ!」

リウはグロ−ブを長い槍に変化させると、それを持って敵陣へと攻めていった。
レオンも自分のカマになにか妖しい呪文をかけると、ぐっとそれを持って足を踏み出した。



「・・・・・・レオンたぁ〜〜ん!!!」


どこからともなく聞こえてきたやる気の出ない声。

「・・・・・・・遅せぇぞ。くんの。」

「いやぁ〜、ごめんタトゥ〜!!町の方にも少し来ていたからそっちの方にまわっていたタトゥ。
もうすぐ、チェインたんも来るタトゥよ!」

「あぁ。チェインになってんのか。今。」


レオンは平然とテラのしゃべりながら、持っているカマでザシュザシュと敵を裂いていく。
ある意味、残酷。


「でも、早めに片付けたほうがいいかもしれないタトゥ。チェインたんもいっぱいいっぱいだったタトゥから。」

「・・・・・あのチェインがか?」


おかしいなっとレオンは眉をよせる。
彼女ほど力のある者はいない。おそらく、レオンが本気を出してもチェインに勝てるかどうかわからない。
そんな奴が、この数の悪魔を相手としても崖っぷちになるのは普通まずありえないだろう。


「・・・・・なんかしんどそうだったタトゥ。まぁ、そのわりには、『早くレオンのところに行けっ!このハゲっ!!』ってタトゥにキレてて怖かったタトゥけどね。」

「・・・・・・・;」


ハゲって・・・・ハゲって・・・・・。







「ごめん。遅くなって。」

レオンはその言葉を聞き、振り返るとチェインの姿があった。
彼女ははっはっと荒々しく呼吸をした。


「だ、大丈夫かよ・・・・。」

「・・・・・・・・・微妙。」


この状況を見て、チェインの体力はほとんどないと言っていい。
レオンはそう判断した時、あのときに言った彼女の言葉を思い出した。


「・・・・・・・・日に日に体力が落ちてるって・・・・ほんとだったのか。」

「・・・・・・・・」


チェインは何も答えず、重い剣を引きずり構え始める。

「お、おいまさか・・・その状態で行くとか言うんじゃねぇだろうな??」

「・・・・邪魔したら、あなたも切るわよ。」




・・・・・・・・・あなたならしかねない。


レオンは何も言わず、ただチェインから顔を背けた。

チェインは足を進め、敵へと向かって行った。
剣を振り上げ、次々と切りまくっていく。
放たれた矢のごとく、早いスピードで。

「す、すげぇ。」

「だーかーらぁー!!早くあんたたちもサボってないで戦いなさいよっ!!」

チェインの戦闘に圧倒されるレオンとテラを見て再びリウはキレる。

っと、突然光がもれた。
光の元へとレオンたちは目を向けると、そこには悪魔が口を大きく開けてブレスを吐こうとしていた。

その方向はチェイン、そしてその遥か後ろにある町へと向けられた。


「ああああぁぁぁ!バカッ!!」

「だあああぁぁあっ!!あいつをとめろっ!!」

レオンはぐっとカマを持ち、魔方陣を描き始める。リウはグローブを剣へと変え、悪魔を切り裂いた。
しかしそれでも一歩間に合わず、その光線はチェインの方へと放たれる。


「ま、間に合わねぇっ!!」

レオンは描き終えた魔方陣に魔力をそそぐが、きっとその光線を防ぐ事はできない。






「あな〜たが呼ぶから〜♪あたしはここに〜い〜る〜♪」


謎の歌が聞こえてきた。っと気がつくと、その光線は一瞬で黒い煙に包まれた。
もやもやとしているうちに、光線は何事もなかったかのように消えていく。


「な、なんだ・・・・?この戦隊ものみたいなノリの歌は。」


Only you!それが〜あたしの〜合い言葉〜〜♪」


黒い煙が晴れたとき、何者かがこちらへと向かってくるのが見えた。
レオンはぐっとカマを構え、そいつを見極めようと目を細くする。

っが、そいつが誰かわかった瞬間、肩を落として気の抜けた顔をした。











「あたしの名前は〜〜名前は〜〜の〜ろ〜〜い〜〜〜♪」

「みりゃわかる。変な歌作んなっ!!」

「あら。一応まだサビよ。次にメロを」

「もういい。」

そう、トレードマークは紫の三角帽子。
そして、左手にはいつもフラスコ。
あの・・・ヒキの森で出会った奴が・・・今再び姿を現したのだ。


「・・・い、いやあああぁっ!!なんであんたがここにいるのよおおおぉぉぉ!!!」

今までの戦いでも表情をほとんど崩さなかったリウが、体全体で拒否している。
相当、のろいは苦手らしい。


「ふっふっふ。なぜでしょう?」

「聞くな。」

レオンが間髪入れずに返した。
のろいはくすっと笑うと、杖を出し呪文を唱える。
すると、黒い雲が一気に風に飛ばされ太陽が透き間からこぼれだした。

太陽の光を浴びた悪魔は光へと姿を溶かして、やがて消えた。


「マイクまで持参して歌を作ってきたのに。あんまり歓迎されなかったわ。・・・ショック。」

「・・・・・・。」

テラは手でこぶしを作っていた。
彼もまたわかっていたのだ。



― そりゃあね。 ―



っと・・・・歓迎されないことに同意をしてはいけないということを。


「・・・・あぁ。この子がエリスちゃんの片割れなのね。ふふふ・・・かわいいわ。」

「・・・・・・・・・・・。」



・・・・キモッ。


チェインは心の中でこっそりつぶやいた。


「さてと、あなたの体力はほとんどないに近いわね。急がないと。」

そう言うと、のろいは杖でチェインに魔法をかけた。
その魔法にチェインは目をつぶると光を放ち、エリスへと姿を変えた。

「・・・・・・・あ、どうも。」

「久しぶり。エリスちゃん。とりあえず、クラノスのアホゥから『どうしても行ってほしい』っと、命令されてここに来たわ。」


― つまり有無言わさず、行けと。


のろいの言葉に皆、心の中で正しい解釈をする。
エリスはクラノスの言っていた『知り合い』というのはのろいのことだったのかっと何度もうなずいて、納得する。


「んじゃ、『鏡の泉』まで案内してあげるわ。時間はもう無駄にはできないわよ。」


のろいはずんずんと森の方まで向かっていく。
エリスたちもそれに続き、森へと向かった。








「Keep」TOPへもどる