「ご苦労様。みんな。大変だったでしょう。」

闇に包まれた部屋にポツンと置かれたイス。
そこに座る一人の青年はクスクスと笑った。


「いえいえ。あなたのことです。きっと策があるんでしょう。」

「まぁね。ふふっ、ミノサロウドもご苦労様。」


拳に頬をのせて、流し目でそれぞれを見る。
チルレット、クロ、ロウ・・・その他にも何人かの姿が見える。

そのうち、一人の少女が問う。


「これからどうするつもり?」

「・・・・・ん・・・そうだねぇ。」

青年はイスから立ち上がり、両手を上に上げて背伸びをする。
そして黒いカーテンをバッと両手で開け、全身に太陽の光を浴びた。

「・・・・・まずは集めるよ。アレを・・・・。そして、デビルゲートを開く。」


青年はクスッと笑う。


「あの男に復讐しなきゃね。・・・・・・・そうだろう?チェイン。」


















「・・・・・・・・・エリスたあぁ〜〜〜ん!」

情けない声をあげて、テラは急いでエリスの元へもどる。
エリスはビニールシートの上に座り、のほほんとしていた。


「どうしたの?テラ。」

「これっ!これっ!!新種の虫タトゥ!!タトゥが発見したタトゥ!!!」

目を輝かせ、子供のようにはしゃぐテラ。
テラの指の中でワサワサと動く奇妙な虫。
そんなテラを見て、エリスはしょうがないなぁっと苦笑いをした。



エリスとチェインが統合したあの日から2週間が過ぎた。
あれから生活はゴロッと変わった。



コルジナGB機関本部所属のリウに至っては・・・・


「本部から連絡があったわ。なんかよくわからないけど、戻らないといけないみたい。」


どうやら、エリスを護衛する役目は打ち切りになるようだ。

でも、もうエリスにはチェインがいるし、テラもいるから大丈夫よね。
だから、自分たちで何とかしてねっとリウは言った。

コルジナBG機関というのは、一種のボディーガードをする機関だ。
人や物を守るため、世界各地様々なところに分布する。
ちなみに、リウはその本部に勤めている11歳の少女だ。
こんな小さい子までもが一生懸命に人を守るとは考えにくい事だが、実際エリスたちと行動を共にし何度もお世話になっている。

リウは最後にクスッと笑い、「なかなか楽しかったわ。また機会があれば会いましょう。」っと言葉を残し、去って行った。



また、魔界から空の森へ探しモノをしに来たと言うレオン・ランディに至っては・・・・


「・・・・このまま旅を続けたいところだが。さすがに、俺も仕事があるしなぁ。」

ここまで長期に休んできたのに、これ以上、休むわけにもいかないだろうっとレオンはため息をつく。

レオンは魔界から来た魔族。
彼はとある少女を探しにこの地へ来た。
エリスたちと行動を共にし、いろいろなところを出歩いていたが、やはり未だ見つからず。

こんな彼だが魔界ではいわば、社会人という身分。
ちゃんと仕事も持っていると話した。
一度魔界に帰って、溜まった仕事を片付けるという方針だ。


さらに、彼は修行をしなおすっとも言った。
空の森での敵との戦い。
あらゆる面で彼も活躍したが、ミノサロウドという男に2回も破れかけた。
そのことを話す彼の表情はどことなく悔しそうだった。



「っということで、俺のいない間はすっげぇ寂しいかもしんねぇけど、悪魔なんかに敗れるなよ?」

らしい。




そして、さらにさらにエリスもあれから少し変わった。
長かった髪をザックリと肩まで切ってしまったのだ。
きっとエリスなりの決意だったんだろう。


「これからは私だってしっかりしなきゃいけないんです。いつまでも過去や自分を見返ってばかりじゃダメです。」



彼女は切る際に、そうテラに言った。


彼らは・・・・少しづつ変化している。


それぞれに立つ壁を越えるために。






それはそうと、次の町まではどれくらいかかるだろうか。
エリスは今朝作ったサンドイッチを口に含みながら、考える。
エリスとテラの果てのない旅。
旅でかかせないのは、やはり町の存在だ。

町は旅人にとってオアシスのようだ。
食料、寝床ろ。すべてがそろっているのだから。


「このまんま町が見つからなかったらどうしよー。むぅ。お金も無くなって来たし、そろそろがんばりどきかなぁ。」


エリスは不安そうな表情を浮かべながら、もぐもぐと口を動かす。
さきほどまで遊んでいたテラもエリスが昼食を取っているところを見て、いそいそとよってきた。


「エリスたん。タトゥはこれからどうするべきタトゥかねぃ。」

「・・・・・・あ。」


ドラゴン界から修行と言われて、半強制的にこの地へ降りてきたテラ。
帰ろうにも帰り方がわからないゆえ、帰れない。
エリスにとっては、ドラゴン界と言うものがまず本当に存在するのかが問題になっている状態なので、知るわけがない。

テラが持ち出した悩み。
エリスは顔を曇らせ、うつむいた。



ドン・・・・・・・ドン・・・・



大砲のような、鉄砲のような音が遠くから聞こえてきた。
その音につられて、エリスとテラは顔を上げる。

「な、何タトゥか?」

「・・・・さあ?」

立ち上がり、先の方へと走って見る。
すると、白い煙が音とともに現れ、もくもくと天に昇っていくのが見えた。
その横には赤と白のバルーンが「アルミドサーカス」っと書いてある紙をつるし、ゆらゆらと揺れている。

「あ・・・あれはまさか。」

「町・・・タトゥか?!w」


エリスは急いで荷物を片付ける。テラもビニールシートをそそくさとたたみ始めた。

「行こうっ!!」

「行くタトゥ!!」

さっきの暗い空気はどこにいったのやら。エリスとテラは町を目指して、走り出した。






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